広帯域電力線搬送通信(高速PLC)の問題点

下記の資料は、現行の広帯域電力線搬送通信(高速PLC)の技術基準に対する、物理学者、電子工学者、電子情報通信系の教育者としての私の見解を示したものです。各方面からのお問い合わせに個別にお答えすることが時間的に困難なので、公開します。出典が分る形での参照・リンクはご自由にどうぞ。私が書いた内容については当たり前のことばかりなので、オリジナリティーは主張しません。ただし、内容は更新する可能性があるので、ダウンロードしたファイルの再配布はご遠慮下さい。科学的な反論、誤りの指摘、コメントは歓迎しますが、お返事のお約束はできません。

現行の日本のPLC技術基準の根本的誤りについて

2006年8月23日の電波監理審議会意見聴取のために事前に提出した準備書面から氏名以外の個人情報を削除したものです。
第415回電波監理審議会意見の聴取 準備書面(2006年8月10日執筆)
これに、私の主張を裏付ける参考文献として、 石原正裕, 梅原大祐, 森広芳照, "屋内電力線通信における漏洩電界の測定," 信学技報 Vol.105, No.643, pp.43-47, EMCJ2005-145 (2006年3月) を添付させていただきました。森広先生のご遺徳を偲び、哀悼の意を表します。

2006年8月23日の電波監理審議会意見聴取において私が主張した内容の一部をまとめたものです。(当日この資料を使って説明したわけではありません。)
高速電力線通信に関するCISPR委員会報告書の問題点(2006年9月初旬執筆)

今回の技術基準の根幹にあるPLCの漏洩電界は「パソコンの雑音と同じ」という認識の根本的な誤りを、一般向けに分りやすく解説したものです。上記資料の後半の付録と考えてください。
誰でもわかるPLCのコモンモード規制の問題点(2006年12月執筆)

2003年3月にCISPRで国際的に否定されていた現行の日本のPLC許容値のやり方

"Application of the LCL method to measure the unbalance of PLC-equipment connected to the Low-voltage Distribution Network" by J. Verpoorte (NLR) のConclusionsをよく読んでみてください。私が、指摘しているのと全く同じことが既に指摘されています。LCLはPLCモデム側の不平衡を評価するには使えるが、短波帯の波長と同程度以上の長さになる屋内配線でのモード変換を評価するには使えないと結論しています。漏洩電界の原因として、差動電流が屋内配線でモード変換されたものと、モデムからコモンモード電流として注入されたものと2つあり、前者にはLCL法は使えないとちゃんと書いてあります。日本のCISPR委員会が2006年に決めた現行の技術基準は、既にその3年以上も前にCISPRで国際的に否定されていた間違った方法だったということです。

なお、私はこの文書の内容が全て正しいと主張するつもりはありません。おそらく、屋内配線でのモード変換については、この文章の扱いでもまだ不十分だと思います。

根本的に間違っている日本のやり方は、国際の場では、ITU-RでもCISPRでも早晩否定されることになるでしょう。それにしても、既に3年も前にCISPRで間違っていると指摘されていたやり方を、国内で同様の指摘がパブリックコメントでも電波監理審議会でもあったにも関わらず、強行し、その結果、周囲雑音をはるかに上回る雑音をばら撒いて電波環境を悪化させた責任は重いと思います。

また、このように既に間違っていると分っている技術基準に基づいて電波環境を悪化させる製品を大量生産して消費者に販売することが、企業倫理に反するのは明らかです。国が間違ったからと言って、技術者や企業まで間違ってよいということにはなりません。

受信機を使った予備実験

鉄筋住宅および木造住宅でのPLC実験結果(2007年1月7日, 11日)

「屋内高速電力線搬送通信からの漏洩電界と電波共存上の問題」 生産と技術 第59巻 第2号 pp.69-71 (2007)
季刊誌に掲載された小文です。(論文ではありません。)期間限定でWebで公開されていましたが、既に見れなくなっています。(国会図書館にはあります。)漏洩電界が環境雑音をどれくらい上回っていたかの数値は、秋号で訂正しています。

漏洩電界とコモンモード電流の定量的な測定

現行の技術基準の元で型式指定されて市販されているPLCモデムについて、漏洩電界や屋内配線上のコモンモード電流を定量的に測定しました。結論から言うと、全てのモデムで周囲雑音を上回る漏洩電界が観測されました。また、モデムから注入されたコモンモード電流よりも大きなコモンモード電流が屋内配線上で観測されました。これらは、現行の技術基準が物理的に完全に間違っていることを示す動かぬ証拠です。これらの実験結果については、研究会や論文で公表する予定ですが、一部の結果は、海外からの問い合わせへの返答として、英文のWebに掲載しています。

また、既に実験結果の一部は、総務省にも正式に提出してあります。

詳細な研究結果については、 電子情報通信学会 環境電磁工学研究会(EMCJ)での私の報告をご参照下さい。

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大阪大学大学院 基礎工学研究科 システム創成専攻 電子光科学領域
北川勝浩

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