The Kitagawa Lab

   --- 量子情報デバイス研究室 ---
  大阪大学大学院基礎工学研究科
システム創成専攻 電子光科学領域
北川研究室
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スピン増幅


物質中の核スピンは電磁波によって比較的簡単に操作することができます。この性質を利用したNMR(核磁気共鳴)分光やMRI(磁気共鳴イメージング)は、化学物質や生体のさまざまな情報を得るために広く利用されています。
しかし、一つの核スピンが出す信号は非常に微弱で、有用な情報を得るには膨大な数の核スピンを必要とします。NMRやMRIで使われている電磁誘導による検出法では、最小でも百万個以上の核スピンが必要で、そのため微小なサンプルを分析することはできません。

もし、一つの核スピンの情報を、まわりの核スピンにコピーすることができれば、核スピンの信号は増幅され、検出感度を向上することができます(図参照)。この手法はスピン増幅と呼ばれます。
これまで提案されてきたスピン増幅の実装方法は、コピー先のスピンを一つ一つ区別して操作する必要があったため、たくさんのコピーを作ることが困難で、せいぜい数倍程度の低利得しか実現されていませんでした。

私たちは、コピー先のスピンを区別せずに膨大な数のコピーを可能とする、スピン増幅の新しい実装方法を考案しました。実際にその方法を用いて、有機化合物の単結晶において140倍という高利得を達成しました。さらに、140倍に増幅されたNMR分光信号を観測することにも成功しました。
この140倍のスピン増幅を、約100個の核スピンの情報が検出できるMRFM(磁気共鳴力顕微分光)の前におこなうことで、単一核スピンの検出も期待できます。未来の超高速コンピュータとして注目されている量子コンピュータでも、量子情報を永く保持できる核スピンを用いることが期待されており、本研究はそれに道を拓くものとして注目されます。


スピン増幅実験装置

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Admin: R. Matsudas