セミナー
- 「量子情報・量子生命セミナー量子計算化学シリーズ#3」 日時:平成30年10月25日(木)13:30~(17時~情報交換会)
- 「量子情報・量子生命セミナー量子計算化学シリーズ#2」 日時:平成30年10月17日(水)13:30~16:55(17時~情報交換会)
場所:大阪大学基礎工学研究棟セミナー室
http://www.osaka-u.ac.jp/ja/access/toyonaka/toyonaka.html
↑上記リンクの21の建物です。
プログラム:
13時30分~15時00分 倉重佑輝様「Matirx Product State (MPS) ansatz を用いた多参照電子状態理論の開発と応用」
(15時00分~15時20分:コーヒーブレイク)
15時20分~16時05分 齋藤暁様「行列積状態を用いた量子計算機の古典計算機シミュレーションの現状と展望」
16時10分~16時55分 大西裕也様「量子コンピュータを用いた量子化学計算の最近の発展」
17時~19時半 情報交換会(基礎工学研究棟ホワイエにて)
主催:大阪大学先導的学際研究機構量子情報・量子生命研究部門
共催:大阪大学基礎工学研究科
問い合わせ先:根来誠(詳細はメール下部)
講演者1:倉重 佑輝 特定准教授(京都大学)
タイトル: Matirx Product State (MPS) ansatz を用いた多参照電子状態理論の開発と応用
概要:
量子化学には凝縮重電子状態と呼ばれる問題があります。電子同士の相関が強く平均場近似を
第零近似とする多体摂動論が破綻するような系で、例えば多重化学結合開裂やπ共役分子励起
状態、遷移金属錯体でみられる電子状態です。特異な電子構造に起因して、これらの分子系は
光応答・磁場応答・触媒作用など特異な物性をもつため、かつてから化学者の興味を引きつけ
てきました。凝縮重電子状態に対しては多参照理論と呼ばれる高度な理論が用いられて来まし
たが、ヒルベルト空間の直接対角化を含む手法であり電子数に対して計算量が指数関数的に増
大することから小さな分子の計算に限られていました。本講演では、多参照理論の適用範囲を
拡張するためのMPS ansatzを用いた新しい電子相関理論の開発と、動的核偏極に関連してペン
タセン分子の励起状態などより大きなサイズの凝縮重電子状態の問題への応用について紹介す
る予定です。
講演者2:齋藤 暁 准教授(崇城大学)
タイトル:行列積状態を用いた量子計算機の古典計算機シミュレーションの現状と展望
概要:
行列積状態(MPS)を用いて量子計算機を古典計算機上で省資源でシミュレートする研究は、
2003年にVidal、2004年に川口らが手法を発表して以来、幾つかの研究グループで行われてき
た。ほとんどの場合、非ゼロSchmidt係数をすべて残して時間発展を計算する厳密手法が使わ
れる。私が開発しているC++ライブラリ ZKCM_QC [1] ではさらに多倍長精度を使用している
が、それは倍精度(仮数部53ビット)では丸め誤差の蓄積で正しいシミュレーションが行え
ない例がある[2]ためである。ZKCM_QCは昨年から計算の一部でGPGPUを使えるようにし、それ
による精度低下はRayleigh商反復で補っている。
本発表では、まず古典計算機上で量子計算機をシミュレートする手法について俯瞰し、MPS
を用いる手法について解説する。その後、ZKCM_QCライブラリについて話す。また、代表的な
量子アルゴリズムをシミュレートしてみた結果について話す。特に、Shorのアルゴリズムにつ
いては、MPS法で高速シミュレーション可能かどうかについて、私のやや肯定的な数値的結果と
、メルボルン大学のグループのやや否定的な数値的結果を比べて見る。最後に数百量子ビット
以上の大規模な量子回路のシミュレーションを目指したライブラリの並列化の展望を述べる。
[1] A. SaiToh, Comput. Phys. Comm. 184, 2005-2020 (2013),arXiv:1303.6034
[2] A. SaiToh, J. Phys.: Conf. Ser. 454, 012064 (2013), in post-
conf. proc. CCP2012 (14-18 Oct. 2012, Kobe, Japan), arXiv:1211.4086
講演者3:大西 裕也 博士(JSR株式会社)
タイトル:量子コンピュータを用いた量子化学計算の最近の発展
概要:
NISQデバイスでの活用を目的とした量子化学計算手法として、
Variational Quantum Eigensolverが注目を集め、いくつかのグループで研究が進んでいるが、
ごく最近では再びPhase Estimation Algorithmについての研究も見られるようになってきた。
本発表では最近の注目トピックについて紹介を行い、今後の方向性についての展望と私見を
述べる。
また、学術界から産業界に転身した一研究者として、キャリアについて思うところについても
述べたいと思う。
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場所:大阪大学基礎工学研究棟セミナー室
http://www.osaka-u.ac.jp/ja/access/toyonaka/toyonaka.html
↑上記リンクの21の建物です。
プログラム:
13時30分~15時00分 河内亮周様「理論計算機科学からの量子計算入門」
(15時00分~15時20分:コーヒーブレイク)
15時20分~16時05分 御手洗光祐様「Variational quantum eigensolver の高効率化」
16時20分~16時55分 望月祐志様「フラグメント分子軌道(FMO)計算の概要と1QBit社のarXiv:1806.01305論文について」
17時~19時半 情報交換会(基礎工学研究棟ホワイエにて)
主催:大阪大学先導的学際研究機構量子情報・量子生命研究部門
共催:大阪大学基礎工学研究科
問い合わせ先:根来誠(詳細はメール下部)
講演者1:河内 亮周 准教授(大阪大学工学研究科)
タイトル: 理論計算機科学からの量子計算入門
概要:
情報科学における理論計算機科学分野は計算機黎明の古くから数理科学的な手法を駆使して
計算の可能性や限界を解析してきた.計算の理論的解析のためにはその数理モデルが必要で
あり,古典計算においては例えば論理回路などを基に古典計算機におけるアルゴリズムの
設計・効率解析やその限界を議論している.それと同等に理論計算機科学においては
量子計算機に対してもその数理モデルが定義され,それに基づいた量子アルゴリズムの設計・
効率解析などが行われている.本講演では理論計算機科学分野の立場から量子計算機の数理
モデルである量子回路の解説を行い,そのモデルに基づいていくつかの量子アルゴリズムの
解説を行いたい.
講演者2:御手洗 光祐 様(大阪大学基礎工学研究科)
タイトル:「Variational quantum eigensolver の高効率化」
概要:
現在活発に研究されている量子コンピュータは今後数年で、雑音は取り切れていないものの、
そのqubit数は古典コンピュータがシミュレートできない領域に到達すると期待されている。
このような量子デバイスは noisy intermediate scale quantum deviceを縮めて NISQデバイスと
呼ばれている。NISQ デバイスでは、雑音のため、素因数分解などの大規模な量子計算を行う
ことは不可能である。したがって、NISQ デバイスを活用するには、雑音下の状況であって
も、古典コンピュータに対して優位に立てる可能性のある問題を見つけることが重要である。
そのような中で、variational quantum eigensolver (VQE) [Perruzo2014] が一つの
アプリケーションになりうるのでは無いかと注目を浴びている。VQE は、比較的”浅い”
量子回路を用いて、ハミルトニアンの基底状態を求めるための手法である。VQE では、
量子回路にパラメータθが導入され、ハミルトニアンの期待値を最小化するように、この
パラメータθを逐次的に調整していく。特に、量子性がパワーを発揮するであろう強相関系に
おいて活用が期待されている。VQE は様々なグループによって実験的な実現・理論的な発展が
なされている。そこでまず最近の VQE のトピックからお話する。その後、発表者が現在
取り組んでいるテーマとして、VQE の高効率化についてお話する。
講演者3:望月 祐志 教授(立教大学)
タイトル:フラグメント分子軌道(FMO)計算の概要と1QBit社のarXiv:1806.01305論文について
概要:
1QBit社のグループによって"Towards the Practical Application of Near-Term Quantum
Computers in Quantum Chemistry Simulations: A Problem Decomposition Approach"
(arXiv:1806.01305)が2018/6/6に出版されました。論文中では、いわゆる「問題分割」の
考え方に基づく、フラグメント分子軌道(FMO)法、分割統治(D&C)法、密度行列埋め込み
(DMET)法のNISQマシンへの適用性が、全エネルギーの精度検証の観点などから検討されて
います。このトークの中では、担当者が専門とするFMO計算の概要をご紹介した後、
当該論文の重要性についてお話をさせていただきます。
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