The Kitagawa Lab

   --- 量子情報デバイス研究室 ---
  大阪大学大学院基礎工学研究科
システム創成専攻 電子光科学領域
北川研究室
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NMRの高感度化に関する研究





核スピンの磁気エネルギーは非常に小さい

核スピンの磁気エネルギーは非常に小さいため熱擾乱に負けて、スピンの向きがほとんどバラバラになっており、発生する電磁波は打ち消しあって、非常に弱くなってしまいます。
近年、NMRの感度を上げるために、動的核偏極(DNP)と呼ばれる手法が活発に研究されています。 この手法ではフリーラジカルを少量添加したサンプルを用います。 このフリーラジカル内の電子スピンに歳差運動と同じ周波数の電磁波を照射したとき、電子スピンの首ふり運動の角度が変化します (NMR(核磁気共鳴)、ESR(電子スピン共鳴)とは参照)。 この変化速度に、核スピンが共鳴する周波数が含まれるとき、電子スピンと核スピンの向きが交換されます。 これによって核スピンの向きを揃えることを動的核偏極と呼びます。スピンの向きの揃い具合を示す偏極率と呼ばれる値が、熱平衡状態では電子スピンの方が、 水素核スピン(原子核のなかでもっとも偏極しやすい)の660倍あります。放出される電磁波の強さはこの偏極率に比例するので、動的核偏極では原理的には660倍の信号強度増大が可能となります。 温度が低いほど熱平衡状態の電子スピンの偏極率は大きくなるので、従来の動的核偏極はより高感度を求めて極低温下で行われています。


本研究室では「光励起三重項状態の電子スピンを用いた動的核偏極法」の研究を行っています。
ペンタセンなどの分子では光を照射すると、電子の軌道が励起された状態になり、その後一部の電子スピンの状態が三種類ある励起三重項状態に変化します。 この三状態の占有数分布は温度に依存せずに非常に偏ったものとなります。 この励起三重項状態から基底状態へと遷移する前に動的核偏極をすることによって温度に依存せず核スピンの向きを揃えることができます。


光励起三重項状態



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